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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

校長先生の長い話は続く。

下腹部の痛みは少しずつ増していき、変な汗が吹き出た。暑いはずなのに、体が徐々に冷えていく。

痛みに、恐怖を感じる。

下腹部を押さえて、そっとその場にしゃがみこもうとしたとき、ふらついて後ろに重心がかかる。

足の踏ん張りが全然効かないことに焦ったが、もはやどうすることもできない。

体が、ゆっくりと後ろに傾いて行った。
前に並んでいる人の背中が遠くなって、代わりに視界に映った体育館の天井が、ぼやけて見える。
自分のお腹や足に、感覚がなくなり、溺れるように息ができなくなった。

「あっ…………」

短く声を上げる。

……まずい、倒れる……。

思うより先に、温かい何かが、わたしの体の支えになる。すっぽりと、わたしの体を包んでいた。状況を理解するのに、たっぷり5秒はかかる。

……誰かの手がわたしの両肩をしっかり支えていたのだった。

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