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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第10章 夏の訪れ

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「わっ、あっ? 冷たい……気持ちいい……」

透明で綺麗な波が、勝手に足に当たっては引いていく。最初は少し怖かった。引いた波が、砂ごと海へと戻っていく。
優は、わたしの手をそっと繋いでいた。

波はじゃぶじゃぶとわたしの両足に当たっては砕けていく。それが楽しくて、ずっと見つめていた。わたしは優の手を離れて、ゆっくりと膝下に海水が来るところまで入って行った。
波が引いたタイミングで、バランスを崩して水中に尻もちを着く。

「おっ、わっわっ」

転ぶと思ったのは一瞬だった。
痛いと思った感覚はなくて、それよりも派手な水しぶきが上がる。

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