
仮面舞踏祭~カーニバルの夜に~
第1章 祭りの夜
このヨーロッパの名前も聞いたことのない小さな国の仮面舞踏祭のことを教えてくれたのも、その後輩だった。
-先輩、まだ内藤さんに未練があるんじゃない? (注-内藤というのは伸吾の名字である。)
後輩のよこしたメールの最後には泣き顔を表す絵文字が入っていた。
その情けない涙顔を眺めながら、その瞬間、友里奈は仮面舞踏祭に行こうと決意したのだった。
これは優柔不断な友里奈としては極めて珍しい決断ともいえる。友里奈は驚く両親を説得し、けして早まったこと-両親は友里奈が失恋の痛手のあまり、遠い異国で自殺するのではないかと心配した-をしないという約束をした。なけなしの退職金の半分をはたいて、この国までの飛行機の搭乗券やその他諸々の準備を整えた。
そして今夜、運命の夜がやってきた。
とはいえ、何ということもない、ただの乙女の感傷(センチメンタル)旅行(ジヤニー)にすぎない。もっとも、28にもなった女を世間一般では乙女と認めてくれるかどうかは、はなはだ疑わしいが。
それはともかく、友里奈はこの夜を待ちわびていた。
-おまえのような、つまらない女。
あの男はそう言ってくれた。まるで人をボロ雑巾のように都合の良いように利用するだけ利用して、あっさりと棄てる間際の台詞がそれだ。
-先輩、まだ内藤さんに未練があるんじゃない? (注-内藤というのは伸吾の名字である。)
後輩のよこしたメールの最後には泣き顔を表す絵文字が入っていた。
その情けない涙顔を眺めながら、その瞬間、友里奈は仮面舞踏祭に行こうと決意したのだった。
これは優柔不断な友里奈としては極めて珍しい決断ともいえる。友里奈は驚く両親を説得し、けして早まったこと-両親は友里奈が失恋の痛手のあまり、遠い異国で自殺するのではないかと心配した-をしないという約束をした。なけなしの退職金の半分をはたいて、この国までの飛行機の搭乗券やその他諸々の準備を整えた。
そして今夜、運命の夜がやってきた。
とはいえ、何ということもない、ただの乙女の感傷(センチメンタル)旅行(ジヤニー)にすぎない。もっとも、28にもなった女を世間一般では乙女と認めてくれるかどうかは、はなはだ疑わしいが。
それはともかく、友里奈はこの夜を待ちわびていた。
-おまえのような、つまらない女。
あの男はそう言ってくれた。まるで人をボロ雑巾のように都合の良いように利用するだけ利用して、あっさりと棄てる間際の台詞がそれだ。
