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第2章 捨てた恋

「柴崎さん、教育係は彼、竹田恭平くんにお願いしようと思います」
「はい、柴崎唯香です。よろしくお願いいたします」
「えっ?!あー、こんな綺麗な子の教育係になれるなんて……」

 ……チャラいな。つーかセクハラだろ。

「こんなだけど竹田くんはよく仕事ができるから。竹田くんをよく見て、仕事覚えてください」
「はい」

 それだけ言って自分の席に戻ってしまったヤスくん……いや、立花主任はそれから全然私の方を見なかった。当たり前か。幼馴染とはいえ、八年会ってなかったわけだし。それに公私混同するような人なら主任になんてなれないだろうし、職場で幼馴染だなんて言われたりそんな態度を取られたりしたら面倒なだけだし。知らない人と同じように接しなきゃ……。

***

「唯香ー、これ食べていい?」
「ダメ!家でヨリちゃんがご飯作って待ってるんでしょ?早く帰りなよ」
「ヨリは仕事だし、それに料理できないよ」

 いつの間にか冷蔵庫からビールを取り出して飲んでるし。自由だな。はぁ、とため息を吐くと、日向が振り向いた。

「何、八年経ってもまだやっぱり好きーって?」
「違うよ、日向にため息吐いたんだよ」

 今更、だ。八年前に私の初恋は終わった。それからたくさん恋したし、たくさん付き合ったし。今更昔の恋に振り回されたりしない。

「まぁ、兄貴は真面目だから。生真面目だから。俺と違ってあんまモテねーし」
「……いちいち自慢挟まなくていいよ」
「久しぶりに会ったすっげー可愛くなった幼馴染に緊張したんだろ」
「ありえない。すっごい普通だったもん。他人みたいだったもん」
「自分から他人になったのに寂しいんだ?」
「……っ」

 やっぱり腹立つこの人。

「全然!他人だから!全然平気!」

 そう、この恋は八年前に自ら捨てたの。
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