
ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第67章 鉄剤注射
「治療がつらいか?」
「え…?」
「注射。しんどい?」
五条先生、きっと帰ってきた時からそう思ってたんだろうな。
それで、いつわたしに話すか考えてたんだろう。
だから、お風呂先入ってって言った時、いつもみたいに"ひな先入れ"って言わなかったんだ。
寝る前にこうして話すために。
ソファーに座ってもお姫様抱っこから降ろしてくれなくて、じーっと目を見つめられてる。
そんな五条先生の瞳に降参して、わたしは静かに頷いた。
「あと4回あるの…3日に1回、黒くて大きい注射。腕もあざだらけになっちゃって、刺す場所無くなってきたのか何回も刺されるの。これがあと4回。」
「そうだな。明日で7回目だな。」
「うん…だけどわたし、五条先生の言う通りちょっとしんどいかもしれない…。藤堂先生に頑張るって言ったけど、明日頑張れるかわかんなくて。憂鬱な気持ち仕舞い込んだはずなのに、全然仕舞い込めてなくて…」
なんだか今日は、不安な気持ちをすごく素直に打ち明けられた。
「ありがとう、ひなの心の声ちゃんと聞かせてくれて。うれしい。」
トクン…
弱音吐いてるのに、うれしいありがとうって、五条先生がぎゅってしてくれる。
憂鬱な気分も晴れてしまうほどで、わたしもぎゅっと抱きついた。
