
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
【義勇軍】
「この剣は――」
レナは、すらりと剣を抜き放ちました。
「――志である」
ここは避難区域です。街は頑丈な塀に囲まれているとはいえ、いつエカタバガン軍が押し入ってくるかわかりません。そこで、市民のほとんどは、この避難区域に逃げ込んでいたのでした。
避難区域は城のすぐ近くにあり、鉄でできた高い塀に囲まれています。万が一、敵が街の中へなだれ込んできたとしても、ここにいればしばらく時間を稼げますし、街の外へ抜ける道もあるので、敵がまごついている間に逃げることもできます。
その安全区域の中で、レナは自分の思いを叫んでいるのでした。
「今滅びようといているのは、国ではない、この国に住む、私たちの命だ。そして、弱い者も強い者も、命を脅かされずに生きていける自由だ。家族や友人や恋人や、そして孤独に生きる者たちの幸せだ。私は国のために戦う。この国に住むみんなの命のために、自由のために、幸せのために戦う。そのために誓う。たとえ私の意思が挫けようと、たとえ身体が傷つこうと、この剣が折れ、私の命が尽きるまで戦い続けると」
まわりにいる市民たちは、黙り込んでレナに注目しています。
「志あるものは、立ち上がるのだ!」
レナは、剣の切っ先を空に向かって突き上げました。
「そして私に続くのだ! いや、私ではなく――」
レナは言い直しました。
「――この剣に――いや、己の志に!」
突きあげた剣の切っ先が、日を照り返して十文字に輝きます。
「あの」
まわりにいた市民の一人が、声をかけてきました。
「レナさま、ですよね」
妃であるレナに気後れしているのか、相手はたどたどしい口調でそう言いました。見れば、レナの身体の倍ほどもある巨漢ではありませんか。その巨漢が、体を小さく丸めてかしこまっているのです。
「この剣は――」
レナは、すらりと剣を抜き放ちました。
「――志である」
ここは避難区域です。街は頑丈な塀に囲まれているとはいえ、いつエカタバガン軍が押し入ってくるかわかりません。そこで、市民のほとんどは、この避難区域に逃げ込んでいたのでした。
避難区域は城のすぐ近くにあり、鉄でできた高い塀に囲まれています。万が一、敵が街の中へなだれ込んできたとしても、ここにいればしばらく時間を稼げますし、街の外へ抜ける道もあるので、敵がまごついている間に逃げることもできます。
その安全区域の中で、レナは自分の思いを叫んでいるのでした。
「今滅びようといているのは、国ではない、この国に住む、私たちの命だ。そして、弱い者も強い者も、命を脅かされずに生きていける自由だ。家族や友人や恋人や、そして孤独に生きる者たちの幸せだ。私は国のために戦う。この国に住むみんなの命のために、自由のために、幸せのために戦う。そのために誓う。たとえ私の意思が挫けようと、たとえ身体が傷つこうと、この剣が折れ、私の命が尽きるまで戦い続けると」
まわりにいる市民たちは、黙り込んでレナに注目しています。
「志あるものは、立ち上がるのだ!」
レナは、剣の切っ先を空に向かって突き上げました。
「そして私に続くのだ! いや、私ではなく――」
レナは言い直しました。
「――この剣に――いや、己の志に!」
突きあげた剣の切っ先が、日を照り返して十文字に輝きます。
「あの」
まわりにいた市民の一人が、声をかけてきました。
「レナさま、ですよね」
妃であるレナに気後れしているのか、相手はたどたどしい口調でそう言いました。見れば、レナの身体の倍ほどもある巨漢ではありませんか。その巨漢が、体を小さく丸めてかしこまっているのです。
