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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

「助ける? どうしたっていうんだ」
「父は・・・・・・、父は・・・・・・私のことをどう思っているのでしょうか」
 急にわけのわからない質問をされて、ピスティは戸惑いました。が、泣き崩れて助けを求めている女に、あまり厳しいことは言えません。
「そりゃあ、きみのことが大切だ、と思ってるんじゃないのかい」
「そうでしょうか。でも私は、父から家を追い出されたのです。だから居場所がなくて困っているのです」
「それは大変だね。でも、困った人を助ける法律も仕組みもちゃんとあるから――」
「そんなことはどうでもいいのです!」
 急に女は声を荒らげました。
「私には味方がいないのです。もしも王さまが私の恋人だったら、どうなすってくださいますか? 家を追い出された私を、お見捨てになりますか」
「恋人だったら――」
 またしても奇妙な質問です。でも、女が、また泣き出すかもしれないので、女を励ますために――というよりは、早く立ち去らせるために、思いつく限りのことを言ってやりました。
「もしも恋人だったら――きみのために命を捨てでも守ってあげるさ」
 ピスティが拳を振りあげてみせると、やっと女は落ち着きを取り戻したようでした。わなわなと震えていた唇をきゅっとすぼめて、深く息をつきます。
「ああ王さま。ありがとうございます。王さまの励ましのお言葉に、私は救われました。本当にありがとうございます」
 女はこくりと頭をさげて礼を言うと、ピスティに背中を向けました。その時に、女の服から、何か封筒のようなものがぽとりと落ちました。
「何かが落ちたよ」
 ピスティはそれを拾って、女に手渡しました。
「まあ、ありがとうございます」

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