
邪恋の爪痕と片恋の彼
第6章 戻らない日常
場所を移動しましょう――――…と、真壁の提案で空いている会議室に向かった。
秋のハウジングギャラリーまで時間はあるが、細かい調整はやっておきたいのだろう。
「すみません、まだWebのデザイナーを口説いているところで…」
「いいですよ、今日は――――ちょっと心配になったものですから…。
野田さんの件――――…伊藤部長が…気にかけていたので…。
境井さんと野田さんは同期だったし…いつも一緒に仕事をしていたからって……事故のことで気落ちしているだろうって――――…」
――――気落ち…?
「あ――――…はい、ちょっと今は…状況整理だけで頭が追い付いていません…」
「そうですか……、大丈夫ですか?」
――――大丈夫…?
「はい、大丈夫です。野田の件は――――…俺の中の問題なので…。
それに、クライアントには関係ないことですから……仕事に支障がでたらそれこそ…死活問題です」
――――何が死活問題だ……
野田の死は――――…問題じゃないのか!?
わかっている――――分かっているんだ!
仕事に私情は関係ないことは!!
でも――――…
今――――その言葉を俺が…
俺が口に出した事が――――――――許せない!
