
狼からの招待状
第1章 幻都
──青ざめた額に、明るいブラウンの髪が、乱れ被る。
……苛立ったように、テーブルの端をピンクのマニキュアの爪の先で、叩く。
舌打ちをして、肩から背中に掛かる赤茶けた髪を、揺する。
眉を寄せ、小さな息を吐き、眠っているチャンミンを見下ろす。
─ドアが辺りを憚るように、ノックされた。駆け寄ったドアが少し開き、謹厳な顔が覗く。「キム…!」皺の多い唇に人差し指を当て、入ってきたのは、背の高い、喪服のようなスーツを着た老紳士だった。
「お嬢さま。もうおやすみください」不満いっぱいの顔で、口を開こうとするのを遮り、「お疲れで、ございましょう。エミンさま。朝まで私がお世話致します」ベッドに歩み寄る。
蒼白い顔で、目を閉じたチャンミンを、物でも見るように眺め下ろす。「キム、お部屋を…病院も変わりたいの」「無理でございましょう、この状態では」呼吸器を取り付けられた顔は、微動だにしない。
白い備品の上の薔薇の葉を摘まみながら、「彼の…チャンミンさんの為よ…」
……苛立ったように、テーブルの端をピンクのマニキュアの爪の先で、叩く。
舌打ちをして、肩から背中に掛かる赤茶けた髪を、揺する。
眉を寄せ、小さな息を吐き、眠っているチャンミンを見下ろす。
─ドアが辺りを憚るように、ノックされた。駆け寄ったドアが少し開き、謹厳な顔が覗く。「キム…!」皺の多い唇に人差し指を当て、入ってきたのは、背の高い、喪服のようなスーツを着た老紳士だった。
「お嬢さま。もうおやすみください」不満いっぱいの顔で、口を開こうとするのを遮り、「お疲れで、ございましょう。エミンさま。朝まで私がお世話致します」ベッドに歩み寄る。
蒼白い顔で、目を閉じたチャンミンを、物でも見るように眺め下ろす。「キム、お部屋を…病院も変わりたいの」「無理でございましょう、この状態では」呼吸器を取り付けられた顔は、微動だにしない。
白い備品の上の薔薇の葉を摘まみながら、「彼の…チャンミンさんの為よ…」
