
狼からの招待状
第1章 幻都
ベッド脇の小型冷蔵庫から、黒の缶ビールを取り出した。ギネスビール─ひとくち呑む。(あの二人…は)カウンターの男がマスターなのだろう。酒場の主にしては、物腰に気品があった。入ってきた若い男も、言葉遣いや仕草に、育ちの良さが窺えた。
(…チャンミン─)空耳だったのだろうか…(あいつのことばかり、考えてるから…)急に、疲れと寒気を感じる。冷たい霧の中を、歩き回ったせいか、少し頭痛もした。
ベッドにコートを取り、もぐり込む。くすんだ色の毛布を顎の下に、引き上げた。目を閉じる。 (チャンミン)病院の方、窓へと顔を向けた。(チャンミン。目、覚ましてくれ)─寝返りをうつ。……霧が全ての物音を、吸いとってしまったような夜だった。
(ユノ。知ってる人の紹介で、会うだけでも…って)…(妹たちとも、知り合いで)…(僕のファン─だって…恥ずかしいな)…(大企業のお嬢さんだけど、感じ良い─若いし)…(母さんが、とっても喜んでくれて─体調も良くなって入院もしないって)…(ソルラルで従兄弟たちと会うと、皆んな、結婚して子供いて)…(ユノ。ご免─彼女の留学先に、行ってくる)…(ユノ。ユノ、僕─引退して、しあわせな家庭……)
(…チャンミン─)空耳だったのだろうか…(あいつのことばかり、考えてるから…)急に、疲れと寒気を感じる。冷たい霧の中を、歩き回ったせいか、少し頭痛もした。
ベッドにコートを取り、もぐり込む。くすんだ色の毛布を顎の下に、引き上げた。目を閉じる。 (チャンミン)病院の方、窓へと顔を向けた。(チャンミン。目、覚ましてくれ)─寝返りをうつ。……霧が全ての物音を、吸いとってしまったような夜だった。
(ユノ。知ってる人の紹介で、会うだけでも…って)…(妹たちとも、知り合いで)…(僕のファン─だって…恥ずかしいな)…(大企業のお嬢さんだけど、感じ良い─若いし)…(母さんが、とっても喜んでくれて─体調も良くなって入院もしないって)…(ソルラルで従兄弟たちと会うと、皆んな、結婚して子供いて)…(ユノ。ご免─彼女の留学先に、行ってくる)…(ユノ。ユノ、僕─引退して、しあわせな家庭……)
