
狼からの招待状
第1章 幻都
─カップを置き、「チャンミンを、頼みます」頭を垂れたユノに、「治療室に移られますが、私の出来ることは致します」キム侍従は柔らかい物言いで、応じた。
「チャンミンを見舞って、失礼します」「─どうぞ。こちらへ」薄暗がりの病室に眠る顔は、チューブや呼吸管に取り巻かれている。
(チャンミン)白いシーツの端にそっと触れた。
……氷の欠片が顔に吹きつける。コートのフードを被りながら、キム侍従の手配したタクシーに向かって、固いアスファルトを歩く。棺桶を思わすタクシーが、病棟まえの広い花壇の先で、白い排気ガスを湯煙のように吐いている。
後部座席のドアを開けかけ─、黒い風が人のかたちになったようにユノを撥ね飛ばした。(チャンミン)にやりと唇を捲り上げる嗤いを残し、チャンミンが車内に滑り込む─タクシーは走り去った。
「おじさん、乗って!」背中に聞き覚えある声がとんできた─小公園の少女が、小型のタクシーのドアから、人形めいた貌を出している。
ユノがドアを閉じるより早く、タクシーは走り出した。
「チャンミンを見舞って、失礼します」「─どうぞ。こちらへ」薄暗がりの病室に眠る顔は、チューブや呼吸管に取り巻かれている。
(チャンミン)白いシーツの端にそっと触れた。
……氷の欠片が顔に吹きつける。コートのフードを被りながら、キム侍従の手配したタクシーに向かって、固いアスファルトを歩く。棺桶を思わすタクシーが、病棟まえの広い花壇の先で、白い排気ガスを湯煙のように吐いている。
後部座席のドアを開けかけ─、黒い風が人のかたちになったようにユノを撥ね飛ばした。(チャンミン)にやりと唇を捲り上げる嗤いを残し、チャンミンが車内に滑り込む─タクシーは走り去った。
「おじさん、乗って!」背中に聞き覚えある声がとんできた─小公園の少女が、小型のタクシーのドアから、人形めいた貌を出している。
ユノがドアを閉じるより早く、タクシーは走り出した。
