※私はドMじゃありません!
第1章 round1. ロータープレイ(外)
彼を睨みつけながら、でも人の目を気にして大袈裟な反応はできずにただ渋々ついてきた先は、アクセサリー屋さん。
そういえば、彼はずっと私とお揃いのものを欲しがっていた。
(いや、なんで今だよ!)
「ねぇ、あとでこよう?いまは…」
「今は、なに?」
「っ、…」
悪魔。最低。人間の屑。
頭の中には罵詈雑言が浮かぶが、そんな私を見て彼は嬉しそうに笑う。
「どれがいい?指輪にしようか」
「も、なんでもい」
「ちゃんと選んで、あず」
「っ…はぁ」
初めは意外と余裕だと思っていたのだが、歩くごとにローターがずれ、外の弱いところに当たってきた。
これはまずい。こんなとこ、人に見られたくない…
「はぁはぁ言ってんじゃん」
人に聞こえるか聞こえないかくらいの声で、彼が言う。
お前がそうさせたんだろ、なんていう余力もない。
「なんか勝手に選んじゃおっか。あんまり長居するとまずいでしょ?」
なにが“まずいでしょ?”だ。わかってるならはずさせろ。
そう思うのに、睨み付けることしかできていない自分がいる。
時折びくっとする私を優しくぽんぽんしつつ、シンプルなシルバーの指輪をお揃いで購入した。
––帰り道、
「店員さん、絶対不審に思ってたよ」
「ん、はあ」
「声でてきてるよ」
「っ、うるさい」
「ふふ」
嬉しそうな彼と、この状態で一人でレジに行かされたり散々な私だった。
でも、私はまだ知らなかったのだ。ホテルについてからどんな辱めにあうのか。