妖艶乱
第3章 選ばれし女
「今夜上様は
いらっしゃるのかしら」
紅を唇に薄くつけながら、
珠子が言った。
珠子は一度将軍と寝た。
「さぁ。
先ほどサエが今夜は
"奥"で過ごされるようだと
言っていたけれど」
新しい着物を並べ見ながら
巴が言った。
同じ頃に紅の扉をくぐった
二人は仲良しであった。
「"奥"へ?
今度はどのお方が授かるのかしらね」
「毎回授かるとは限らないわよ」
巴は桃色の打ち掛けを手にとり
体に当てた。
「どうかしら」
「似合うわ。綺麗だもの」
そこへ繭子が
あわただしく入ってきた。
「珠子殿っ巴殿っ」
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