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ホントノ私ハ、此処ニイル

第2章 第2話


 一方、鮮魚部門では知ってのとおり、主に使われるのは出刃と刺身包丁。

 砥石で日々綺麗に磨かれた刃身は、キラリと魅惑の輝きを放ちます。


 魚を動かないように押さえ付ける左手の甲に浮き出る血管。

 荒々しく剥がされたウロコが小さく孤を描きながら飛び散り、濡れたまな板の上でじっと次の所作を待つ――

“次はどうして欲しいんだ?”

 そんな言葉を待ち侘びているかように、まとうものがなくなった魚はしなやかにその身をあずけるのです。

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