
たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第1章 杉並実果留
武が先頭をきって、教室の戸を開けた。
「うぃーっす!」
軽い挨拶をする武の後に続き、私も「おはよー!」と明るく言った。
「おっ! やっと来たな!」
「実果留、おはよー。今日もギリギリセーフ!」
武と私の友人達が、嬉しそうに寄ってくる。
やっぱいいなぁ、この雰囲気。クラス替えしたばかりなのに、みんなもうすっかり仲良しだし。
でも、それもあと一年……。
高校卒業するのが惜しいなぁ。
きっと、武とも別々になるかもだし。
楽しげに笑う武をチラッと見た。
離れたく……ないなぁ……。
「……おい。武、どうしたんだよ。頬が片側真っ赤だぞ」
ギクッ……。
その犯人である私は気まずく思い、若干肩を揺らす。
「あぁこれ? これはなぁー…………」
一瞬私と目が合う。武は私にしかわからないように、クスッと小さく笑ってきた。
ぐっ……。まさか、胸を触ったことを言ったりするんじゃ――
「……いつもの如く寝ぼけててさぁー、ベッドから落ちたんだよ。んで、顔で着地?」
……言わなかった。
それを聞いた友人達は「武らしいなー」と爆笑。
それでも武は「うるせぇ」と言って、それ以上は語ろうとはしなかった。
武、私のことを少しも触れずにいてくれた。
胸のことは言わずとも、ビンタをされたことだけでも言った方が、武の立場的には有利なはずなのに。自分のただのドジとして終わらせた。
そういえば、昔からそうだった。親に怒られてる時も自分だけが悪いって言って、私のことは一切口を割らないで守ってくれて……。
だから私、いつまでも好きでいられる。
