
たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第1章 杉並実果留
ふと、武が近づき、私の頭の上に手を伸ばしかけた。
だけど、ハッと何かに気づいたような顔をすると、すぐに手を引っ込めた。
え……? 何で?
てっきり頭をぽんっとしてくれるかと思って期待をしたのに。
昔からしてくれる、私を安心させてくれる、武のもう一つの特技を……。
「……ま、そんなに心配すんな。俺、寝ぼけてて記憶があいまいだったし。ていうか、思いっきしビンタされて、かすかに覚えてた感触も何もかもぶっ飛んだし」
武は、引っ込めた手のことには触れずに、軽く笑みを浮かべた。
武……どうして?
ガッカリしかける私を追い越し、先を歩き出すと――
「あとは……彼氏に慰めてもらえよ」
振り返らず、独り言のように呟いた。
「……あ」
そっか。頭をぽんっとしなかったのは、私の彼氏に遠慮して……って、胸まで触ったヤツが、頭をぽんっ程度で遠慮しないでよっ。
「じゃあ……そうしてもらおーうっと!」
私は精一杯強がって、武をまた追い越した。
武の……バカ。
