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やさしく愛して

第1章 やさしく愛して

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 歩きながら、わたし、また、と言ってしまったわ、と思った。
 わたし、衛藤さんに、また会いたいと思っているのだわ。
 つぎに、衛藤さんと会ったのは、休日の買い物帰りだった。
 衛藤さんが、詩を貼り替えていた。
 「その詩は、
  工藤直子さんの、
  『のはらうた』ですね」
 「あっ、
  こんにちは。
  『のはらうた』の、
  工藤さんです。
  あっ、
  いや、
  はい、
  『のはらうた』です」
 「あはは。
  ああ、おかしい。
  ほんとに、
  あわてんぼうさん」
 「いや、
  その、
  そうだ、
  杉崎さん。
  詩がお好きなら、
  私のファイルしている詩を、
  ご覧になりませんか」
 「いいんですか」
 「はい。
  三千はあると思います。」
 「そんなに」
 「お時間があるのでしたら、
  コーヒーも淹れますので、
  よかったらどうぞ」
 「ありがとうございます。
  読ませてください」
 と言って、衛藤さんの経営している塾で、パソコンにファイルしている詩を読んだ。
 そのあいだ、衛藤さんは、わたしの買い物品の、冷蔵ものと冷凍ものを、冷蔵庫に入れてくれた。
 なんと優しい、なんと気遣いのできる人だろうかと思った。

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