
土壇場の恋・あなたならどうする?
第4章 綱吉と竜二
「いただきます」
我ながら図々しいとは思ったけど空腹には勝てず、
テーブルにセットされていた純和風の朝飯を綺麗に
平らげた後 ――
「ごちそうさまでした」
一応後片付けをして。
さぁて、これからどうしよう……
まだ名前も知らないイケメンなあいつは、
俺に夜まで待っていて欲しいみたいな口ぶりだったが
そうそう甘えてばかりもいられない。
前回までは自殺未遂をやらかす度に、
病院なんかの治療費がつき。
借金は減るどころか増える一方だった。
今回そうゆう事はなかったようでそれだけは
ホッとした。
でも、ほんの少しだけ”ひと休み”と、
ソファーに寝転がった。
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天井にぼんやり視線を泳がせながら、
さっきまで一緒だったあのイケメンの顔を
思い浮かべる。
絶対どこかで会ったような気がするのだが ――、
うーん ……
う~ん ……
ダメだぁ。
いくら頭をフル回転させても思い出せない。
……ま、そのうち思い出すか。
こうゆう時は寝るに限る!
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借金取りから逃げ回らずにいられる時間。
お腹もいっぱいだし、快適で安全な空間。
「昨日までは、想像もしてなかった」
ただもう、生きていくだけで精一杯だった。
返済できるあてなどない多額の借金 ――
それこそ夫婦共働きで身体が磨り減るくらい働いても
利子すらまともに返済できない状態で。
両親は別れの言葉さえ残さず死んでしまった。
葬式の翌日、借金の取りたてにきたヤクザに
『喜べ。いい買い手が見つかったぞ』
と言われて目の前が真っ暗になった。
普通なら信じられない事だけど、
叔母が俺を売ったらしい。
『5分で身の回りの荷物をまとめてこい』
って言われ、半地下の自分の部屋に行くフリをして、
叔母の家から逃げ出し、無我夢中で走って。
辿り着いた場所が、あの公園だった。
