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土壇場の恋・あなたならどうする?

第4章 綱吉と竜二


 ―― ズドンッ!

 まだ寝惚けていたせいでベッドから思い切り落ち、
 したたかにお尻を打ちつけた。


「いててて……」



 ―― バタン!
 
  
「おい、何してる」


 勢いよく扉が開いたと思えば、
 駆け込んで来たのはパジャマ姿でも綱吉々しい竜二だ。
 彼を見た瞬間、綱吉は ”あれっ”こいつと何処かで
 あったような気がする……と思ったが、どうしても
 思い出せず彼の端正な顔を見つめたまま固まった。


「大丈夫、か?」 

「は? あ、何って……とりあえず、起きようと
 思いまして……」
 
 
 そう言い終わったところで、綱吉の腹の虫が
 ギュルギュル~~っと鳴った。
 
 
「良かった。身体は丈夫そうだな」

「は、ぁ、お陰さまで」


 (こいつは、何なんだ?) 



 そう思いつつ立とうとすれば、
 さっきベッドから落ちた時に打ったお尻以外が
 その頃になって痛み出し、立てず、
 よろけてその場にへたり込んだ。

 あぁ、情けねぇ……


「どうした?」

「あ、い、いや……」

「どこか痛むのか?」

「ん ―― まぁ、そんなとこです」


 彼は「はぁー」とため息をつき
 綱吉を軽々と抱き上げベッドに座るようにして
 ストンと置いてくれた。
 そして綱吉に目線を合わせるようにしてしゃがむ。


「どこが痛い?」

「どこって……全部? みたいなー」

「診るぞ」


 綱吉が止める間もなく、
 シャツがめくり上げられ、
 竜二は大きく目を見開いて驚いた。
 
 両親が自殺後、それといった身寄りのない綱吉は
 譜系を末端まで辿ってやっと見つかった遠縁の
 親戚宅に預けられた。
 
 彼が見て驚いたのは、綱吉の身体の至る所に残った
 傷痕だ。

 遠縁の叔母やその家族から連日殴る・蹴るの暴力を
 加えられていたから、そんな怪我の跡なんて
 そう簡単に消えるわけがない。

 家業柄、この手の疵なら見慣れている竜二は、
 綱吉の疵が喧嘩や自損で出来たモノではないと
 ひと目で見抜いた。

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