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take a breather

第10章 Lotus

侑李くんと少し気まずい空気の中
智くんのパンを3人で食べた

智くんはそんなこと気に留める様子もなく
俺が新たなパンに手をつけると『どお?』って聞いてくる

もちろん美味しいよ?
智くんが作ってくれたパンはどれも本当に美味しい…

でも 智くんが俺の方を見て微笑む度に
その向こう側から来る侑李くんの視線が痛いんだ

「美味しいよ…ね?侑李くん」

「あたり前じゃないですか…
大野くんが作ったんですから」

気を遣って声を掛けると呆れたように返されてしまい 取りつく島もない

居たたまれなくなって予定より早く会社に帰ることにした

「ご馳走さま、智くん…俺そろそろ失礼させて貰うね」

「えぇ〜…もう帰っちゃうの?」

智くんが寂しそうな顔をした

「うん、ごめんね 会社に戻って仕事しないと…」

「そっかぁ…じゃあまた来てくれる?」

「うん…また来るよ」

侑李くんが嫌そうな顔をするのはわかってるけど
俺も智くんにまた会いたいと思うから
そこは嘘を吐かずに本心で答えた

俺と智くんは友達になったんだから別に問題ないよね…

「ん、待ってるね」

「じゃあ…」

椅子から立ち上がると 智くんも立ち上がった

「外まで送るよ」

「え?いいよ、大丈夫…」

「いいから、俺が送りたいの」

「あ、うん…それじゃあ…」

「侑李、ちょっと待っててな?」

「…はい」

侑李くんを置いて店の前まで出た

「智くん、もうここでいいよ
侑李くんが待ってるから」

「俺は侑李よりも翔ちゃんと一緒にいたいの
もっとゆっくり話したかったのに…」

侑李くんには申し訳ないけど
本気で残念そうに話す智くんを見て
さっきまで感じていた重い気持ちが晴れていくのがわかる

「今度はもっと時間作ってくるね」

「うんっ」

智くんが満面の笑みを見せる

あれ?まただ…

また『きゅっ』ってなった…

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