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take a breather

第10章 Lotus

侑李くんは吹っ切るように顔を上げた

「残念!今はお店の開店のことで忙しいですもんね?
でも お店が軌道に乗ったら僕の言ったこと考えてくださいね?」

「ん?あぁ…まぁいいけど…いつになるかわからねぇぞ?」

智くんが困ったような表情で曖昧な返事をした

それでも嬉しそうに微笑む彼…

侑李くんが考えて欲しいのはここで働くこと?
それとも一緒に暮らすこと?

どちらにしても智くんが考えてくれるというだけで
彼にとっては嬉しい事なんだ

…そんな彼を見てると 胸が騒つく

なんでだろう…初対面でまだ話すらしてない人なのに

「翔ちゃん、侑李もパン食いたいって言うんだけど 一緒にいい?」

考え事をしていたら 背後から突然智くんに声を掛けられ吃驚した

「えっ⁈あっ、うん…もちろんっ」

「ごめん…驚かせた?」

「ははっ、ちょっと ぼーっとしちゃってた」

「そっか、ごめんな?待たせて」

智くんが申し訳無さそうな顔をした

「ううんっ!大丈夫!そんな待ってないよ?」

「すみません、先客がいらしたんですね…」

智くんの後ろから侑李くんが顔を出した

「あぁ、まぁな…」

「お友達ですか?
随分 仲が良さそうですけど…」

「いえ、智くんはお客様です
うちの会社で袋を購入して貰うので」

「え?業者さんなんですか?
まるで友達みたいな喋りしてますけど
随分と失礼な方ですね?」

目を見開いて驚きの表情をする

たしかにお客さまに対して失礼だよな…

普通ならありえない応対の仕方だ

返す言葉も無くて彼から視線を逸らした

「翔ちゃんはちゃんと敬語で丁寧に話そうとしてたよ
でも 俺がイヤだからやめてくれって頼んだの
翔ちゃんは悪くない そんな言い方するな」

智くんがそう言うと 侑李くんは悔しそうに口を噤んだ

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