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take a breather

第1章 Now or Never

急いで描かないと間に合わない。
でも描いてることを翔くんに知られたくない。

バイトを急に休む訳にはいかないし。
翔くんとの電話もしたい。
その結果、寝る時間を削って描くしかなかった。

「智くん、疲れてる?
目の下に隈が出来てる」

週末の翔くんとのデートの時にそう言われ、慌てて首を横に振った。

「昨日さ、深夜にB級のホラー映画やってて、ついつい観ちゃったんだよね」

「そうなの?面白かった?」

「ん、まあまあ、かな?」

実際観てねぇし。
内容聞かれたらどうしよう、答えらんねぇ…

「智くん、映画好きなの?」

「アクション系とホラーは観るよ」

「じゃあ、今度アクションの映画観に行こうか」

「アクション限定?ホラーは駄目なの?」

「…俺、怖いの苦手…」

翔くん、ホラー苦手なんだ。
だから内容も詮索されなかった?

それにしても、ホラーが怖いなんて可愛いな。
また翔くんのこと、ひとつ知れた。

「そっか、じゃあアクションの映画観に行こうね?」

「うんっ」

こうやって新たな翔くん情報を知っていける事が嬉しい。

「あ、それでさ、来週なんだけど、家の近くの駅で待ち合わせでもいい?」

「うん、いいよ?何時に行けばいい?」

「6時までバイトだから15分位に駅でどう?」

「わかった。
う~、楽しみだなぁ。智くんの家に行けるの」

「あまり期待しないでよ?手料理だって叔母さんよりは遥かに劣るからね?」

「それでもいいよ。智くんと一緒にいられるなら…」

恥ずかしそうに微笑む翔くんを見て、俺もちょっと…いや大分期待しちゃう。

『今度はもっとちゃんとしようね』って言ったのに
あの日以来、翔くんとキスさえ出来ていなかった。

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