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take a breather

第1章 Now or Never

テーブルの上に置いておいたスケッチブックを取り、翔くんに差し出した。

「はい」

「ありがとう」

翔くんは笑顔でスケッチブックを受け取ると、視線を手元に移動させた。

絵を見た翔くんの顔が真顔に変わった。

「こ、れが、俺…?」

「うん。気に入らなかった?
本物の方が全然イケてるんだけど、俺の力だとそれが精一杯で…」

翔くんはふるふると首を横に振り、スケッチブックを見詰めたままでいる。

「ううん…すごい…俺じゃないみたい…ってか、俺じゃないよ。俺、こんな綺麗じゃない…」

大きな瞳に潤みが増した。

「よかったぁ…怒らせたかと思った。
モデル頼んだのに、こんな絵しか描けないのかってさ」

翔くんは勢いよく顔を上げると俺に詰め寄って来た。

「そんな訳ないじゃん!こんなに素敵な絵なのに!」
 
「あ、ありがとう…」

翔くんの勢いに少し押されてしまった。

「あ…ごめん。俺、ムキになって…」

顔を赤らめて体を引く翔くんが可愛らしくて…
俺の絵を本気で褒めてくれたことが嬉しくて…

これからもこの人とずっと一緒にいたい…そう思った。

これが人生初の一目惚れで…そして俺の初恋。

今まで周りの友人に彼女が出来ても、羨ましいとか、恋人が欲しいとか思ったことはなかった。

それは、俺にはこの出逢いが待っていたから誰にも興味を持たなかったんじゃないか…

そう思ってしまうくらい、俺の心は急激に翔くんに捕らわれている。

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