テキストサイズ

take a breather

第27章 Turning Up

「そうかも知れないね…
ニノの言う通り、彼の事も本気で好きじゃなかったのかも…」

「今まで、諦めるか、妥協してきた智が
翔くんのことは本気で好きで、本当は諦めたくないんじゃないの?
だから、翔くんに恋人が出来る事を想像しただけで泣きたくなる」

そうだよ…本当は諦めたくなんかない
誰か他の人のモノになんてなって欲しくない

でも、翔くんにしあわせになって貰いたいのも本心

過去に、傷を負った彼を…今なお傷ついてる彼を、これ以上苦しめたくない

女性恐怖症を克服して、そして恋人を見つけて、しあわせになって貰いたい

僕の頭の中で、真逆の想いがせめぎ合う

「ニノ…僕はどうしたらいいんだろう…
本当に翔くんにはしあわせになって貰いたいんだ…」

胸が苦しくて涙が溢れそうになり、両手で顔を覆った

ポンポンと僕の頭をニノの手が優しく撫でる

「智…俺は、智にもしあわせになって貰いたいよ?」

ニノの優しい声に我慢していた涙が溢れた

「でもっ…翔くんを苦しめたくないっ」

「智だって、苦しい思いしてるだろ?
今回の事だけじゃない
今まで、周りから理解されず
どれだけ冷たい目で見られてきた?」

「それは…そうだけど…」

「大体さ、翔くんの考えとか聞いてみたの?
あの店で働いてるくらいだよ?
同性愛者のことは理解してるんじゃない?」

「う、ん…」

そうだよね…これから弁護士になろうとしてるんだから、同性愛を理由に人を差別することはないだろう

「智の想いを受け止めてくれないとしてもさ
それは翔くんにしたら、『男』だからとか、『女』だからとかじゃなくて、『智』だからってことだよ」

「へ?僕、だから?」

「そう、智だから
智が翔くんにフラれるとしたら
ひとりの『人』として、『智』と付き合えないってこと」

「それって、励ましてくれてる?」

「俺としては、励ましてるつもりだけど?」

ニノらしい励まし

言わんとする事はわかったよ
翔くんが僕を振るとしたら、それは僕に人としての魅力が足りないってこと

だから、翔くんが男に対して嫌悪感を持つ事はない

「ありがとう、ニノ」

「どういたしまして」

ニコッと笑ったニノ

やっぱりニノは唯一無二の親友だよ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ