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二宮先生が教室に入って間も無く
パタパタと廊下を早足で歩く音がする

廊下を走っているのを教師に見つかると叱られるからな
これが廊下を歩く最速のスピードギリギリなんだろうと思わせる速さだ

何か急ぎの用でもあるんだろう…
文化祭はハプニングの連続だから
慌てふためく生徒が走り回ってる姿はよく見る光景

それにしても、始まってすぐにハプニングとは大変だな…

こちらに近付いてくる足音の持ち主は、どんな人物なんだろうと目を凝らす

「えっ？」

目に飛び込んで来た意外な人物に、声を出して驚いてしまった

「大野先生？」

先生が何をそんなに慌てる必要があるんだ？
まさか、美術室の絵に何かあったとか？

「櫻井くんっ」

先生が俺の前でピタリと止まる
若干息が上がってる所を見ると、かなり慌てているのだろう

「何かあったんですか？
まさか、展示した絵が荒らされてたとか」

一昨日展示したから、誰かが忍びこんでイタズラでもされた？

「え？そんな事ないよ？
さっき様子を見てきたけど、ちらほら見学の人が来てくれてた」

「なんだ…良かった…
じゃあ、何をそんなに急いでるんです？」

「これっ！これが送られてきたから、急いで来た」

大野先生が俺に向けて見せたのは、先生のスマホ

「えっ⁈これって、さっき二宮先生が撮ったやつ？」

送った相手は大野先生？

「そう！『急いで来ないと着替えちゃうよ』ってメッセージ付きだったから、急いで来た」

「は？なんですか、それ？
俺、呼び込み要員なんで
半日はこのままだと思いますよ？」

「えっ！マジでっ⁉︎あ〜、二宮先生に騙されたぁ」

大野先生がガクッと肩を落とす

「でも、櫻井くんの可愛い姿が早く見られたからいっか」

顔を上げた大野先生がニコッと微笑んだ

なんだよそれ…そんな事言われたら、ドキドキするじゃん