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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

夏休みが明け、始業式の日

いまだ完全には癒えぬ胸の痛み…
それでも学校を休む事は出来ない

親にも、大野先生にも心配を掛けたくないから

朝礼が終わると二宮先生に声を掛けられた

「櫻井、ちょっと…」

「はい…」

二宮先生の後を追って廊下に出た

「体調、大丈夫なのか?」

「え?大丈夫ですけど、なんでですか?」

「ん?いや、大野先生が心配してたから」

あぁ、成る程…大野先生は二宮先生にまで話したのか

「大野先生って、心配症なんですね…」

「そんな事ないだろ?
自分の事にさえ無頓着だから
いつも俺が気に掛けてやってる」

確かに言われてみれば…

会議の時間にさえ遅れそうになる人だ
心配症ではないのか

それに相葉さんも、寝食取らないからとカズさんが心配して、様子を見に来させられたって…

自分の事には無関心なクセに、俺の事は心配するんだ

「あんま根詰めて勉強するなよ
今からそんなだと最後までもたないぞ?」

「えっ?」

「体調は悪くないって言ってたけど
顔が疲れてるから…
お前の事だから、勉強のしすぎかと思ったんだけど…」

顔に出てるか…大野先生にもバレるかな

「あ、はい…気を付けます…ありがとうございます…」

ひとまず二宮先生にお礼を言うと、二宮先生が訝しげな表情をし、ボソッと呟いた

「勉強じゃないのか…」

二宮先生がジッと俺の顔を見る
全てを見透かされそうで怖い
思わず視線を逸らしてしまった

「夏休み中、何かあっただろ?」

「いえ、何も」

これ以上詮索されたくなくて、食い気味に即答した
いずれ二宮先生には聞いて貰いたいと思ってたけど、まだ早過ぎる

「ふ〜ん…まぁ、いいか
大野先生に報告だけはしておくよ」

二宮先生は立ち去って行った

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