
take a breather
第23章 証
『今から帰る』とねぇちゃんから連絡が入った
間もなく8時…思ったよりも早かったな
インターフォンが鳴り、ねぇちゃんの声を確認すると
絵莉は玄関に走って行った
「おかえりっ、ママ」
「ただいま、絵莉。良い子にしてた?」
「うんっ。智と翔くんとデートしたの
凄く楽しかったよ」
「翔くん?」
俺の隣に立つ翔が頭を下げた
「智さんの後輩の櫻井です
いつも智さんには、お世話になってます」
「あらやだ、ご挨拶が遅れまして…智の姉です
いつも智がお世話になってるだけじゃなく
今日は絵莉までお世話になって、ありがとうございます」
俺に対しては横柄な態度を取るけど、他の人にはちゃんと挨拶出来るんだ…
社会人として、当然の事なんだろうけど
普段見慣れないねぇちゃんの姿にちょっと感動…
「いえ、絵莉ちゃんとてもいい子で、お世話なんてしてません」
ニコッと笑い、挨拶をする翔
「ママ!わたしね、大人になったら翔くんと結婚する」
「おい、絵莉っ」
今、その報告いらないだろ
「まぁ…絵莉ったら…」
ほら…流石にねぇちゃんも困って…
「男見る目あるじゃない
智と結婚するって言われた時は『この子、見る目ないわね』なんて心配したけど
いやー、よかったわ〜」
「や、あの…ねぇちゃん…」
「絵莉、帰るから荷物取って来なさい」
「はーい」
ねぇちゃんが絵莉に帰りの支度を促すと、絵莉はリビングに置いてある荷物を取りに行った
絵莉を見ていたねぇちゃんの視線が、翔に戻る
「…ごめんなさいね、子供の戯言に付き合わせちゃって…」
「あ、いえ…」
「今日一日、凄く楽しかっんだと思うわ
本当にありがとう、翔くん」
「こちらこそ楽しませて貰ったので、お互い様です」
「ふふっ…いい子じゃない、智…
見る目があるのは、智もね?」
ねぇちゃんが俺を見てウインクする
そこへ、パタパタと走ってくる足音…
「ママー、早く帰ろ〜」
「はいはい、じゃあまたね?智、翔くん」
「はい、また…」
翔はねぇちゃんに向かって頭を下げた
「バイバ〜イ」
絵莉が手を振り、ふたりは帰って行った
