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Memory of Night

第6章 再会


 雑談を始めてどれくらいの時間が経っただろうか。

 志穂の瞼が、眠たげにまどろみ始める。

 口数も少なくなり、五分も経たないうちに志穂は小さな寝息をたて始めた。


(まったく……ガキみてーだよな)


 志穂のかけ布団を整えてやりながら、心の中で苦笑混じりにつぶやく。

 好きなものを食べ、好きなことをしながら眠くなったら寝てしまうなんて、随分といいご身分をしている。

 そんなかわいらしい性格のせいか、宵には志穂は世話の焼ける姉か、下手をすれば妹のように思えてしまうことも度々あるのだった。

 宵が静かにドアを開け廊下に出ようとすると、部屋の前に弘行が立っていた。志穂の検診の時間のようだ。


「宵くん」


 弘行が驚いた顔をしている。


「随分長く志穂さんのとこにいてあげたんだね。珍しいな。もう帰るのかい?」

「うん。寝ちゃったし」

「そうか。また来てあげるといいよ」


 弘行の言葉に、宵は軽く頭を下げて歩きだそうとした。

 そして、思いついたように言葉を付け加える。


「そういえば、先生ってあの人のこと、名前で呼ぶんだね」

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