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Memory of Night

第6章 再会


 トランプは、やはり二人ではつまらない。

 いろいろな種類のトランプゲームを何度かやったが、すぐに飽きて結局やめてしまった。

 でも宵は、トランプをやめてもすぐには帰らなかった。

 志穂を横にさせ、喉をできるだけ圧迫させないような体勢をとらせると、しばらくの間雑談をしていた。

 志穂の見舞いに来ることじたいが珍しく、来たとしてもせいぜい三十分程度しかいたことのなかった宵が雑談に付き合ってくれたことがものすごく嬉しかったらしく、志穂は夢中になってしゃべり続けた。

 おもしろい看護師の話、仲良くなった患者さんの話。自分の面倒を昔から見てくれていた弘行の話などを、かぼそい声で一生懸命話した。

 宵のことも、学校のことや友達のこと、勉強のことなどをたくさん聞きたがった。宵は適当に相づちを打ちながらそれに答えた。

 ただ、バイトのことを持ち出されたときには本当のことを答えるわけにはいかず、適当に流したり嘘をついたりして誤魔化してしまったけれど。

 他愛のない話。それはとても心地のいいものだった。

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