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Memory of Night

第3章 秘密


「もう……ッ、どう……て会いに来て……くれないのよ……っ」

「……悪かったよ。だからしゃべんな。つーか寝てろ」


 宵は咳き込む志穂の肩に手をやり、そっと横にさせた。

 病院には頻繁に来ていたが、なんとなく気恥ずかしくて志穂にはあまり会いにこなかった。

 それに、宵が来ると、志穂は無理をしてでも話をしようとするから。

 志穂は喉に腫瘍のできる病気を患っている。そのため、喋ることはあまり良くないのだ。

 宵が志穂の布団を掛け直してやると、


「志穂さん、て宵のお姉さん?」


 耳もとで晃の声がした。

 ドアに掛けてあるプレートを見たので身内だということはバレてしまっているだろうし、仕方なく、宵は本当のことを話した。


「違うよ。俺の母親」

「……!?」


 晃が目を見張る。


「ずいぶん……若いね……」

「まだ二十六だし」

「……っ!? 宵って九つの時の子供?」


 こそっと聞いてくる晃に、宵はがくっと肩を落とした。

 ……ここまで言って、どうしてそういうことになるのか。

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