Memory of Night
第3章 秘密
「失礼します」
病室に足を踏み入れるなり、晃は普段の優等生の笑みを浮かべて礼儀正しくお辞儀をした。
中ではちょうど志穂が目を覚ましていて、晃の母らしい看護婦に、点滴の交換をしてもらっていた。
志穂は晃を不思議そうに見やり、小声で聞いた。
「あの、どなたでしょう?」
「大西晃と言います。すみません。母の仕事を見学させていただいてます」
人のいい笑顔を浮かべ、晃が看護婦に視線を向ける。
「あら、お子さんなんですか?」
「ええ」
看護婦も笑顔で頷いた。
「あ、あと、宵くんとも仲良くさせていただいてます」
そう言って、入り口のところで逃げ出そうとしている宵を引っ張る。
無理矢理押し出すと、志穂があ! と声を上げた。
「宵! 来てくれたの!?」
体を起こしながらパァッと叫んで、志穂がゴホゴホと咳き込む。
「大河さん……ッ! ダメですよ大声出しちゃ……!」
看護婦は慌てて志穂の背をさすった。
その様子に、宵が呆れたようにため息をつく。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える