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Memory of Night

第7章 夏祭


 姫橋祭は、すでにたくさんの人々で賑わっていた。

 かき氷を持った小学生や手を繋ぎながら微笑み合うカップル、出店のゲームを楽しむ家族など、様々な人達が群がって、密集している。

 姫橋自然公園で、みんなそれぞれに祭を満喫している。

 そんな人々を横目に、晃は小走りで前方を見つめ声を張り上げた。


「宵! 待てよ! 宵……!」


 カツカツと、軽快に下駄の音を響かせながらとっとと先を歩いていってしまう宵のゆかたの裾を晃は引っ張った。

 宵が振り返る。

 だがその瞳は冷たく、鋭い眼光で晃を射抜いた。


(……うーん、やっぱ相当怒ってるなー)


 メイクは一応完成した。

 肌に軽くファンデーションを馴染ませ、目元にアイシャドーで影をつけ、なぞる程度に口紅をぬる、というお手軽なものではあったけれど。

 それでも、宵の見映えはずいぶんと変わりより女性らしくなった。

 これなら、知り合いや同じ高校の生徒達に遭遇してもわからないかもしれない。

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