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Memory of Night

第7章 夏祭


「そんなものいらな……――わっ!」


 晃はいつでもマイペース。宵の言葉など聞かずにパッと体を離した。

 慣れないゆかたのせいでバランスを崩した宵が、しりもちをつく。

 手をついたまま晃を見上げ睨むと、晃はくすっと笑って言った。


「さぁ、いよいよ仕上げと行きまショウ。メイクのお時間デス」

「メ……メイク!?」


 宵がスットンキョウな声をあげる。

 あんなベタベタしてそうな物を顔に塗るなんて冗談じゃない。


「晃っ! てめーいい加減に」

「薄く塗るだけだよ。宵は肌白いし、荒れてもいないようだからね」


 そんなことを言いながら、晃は手早くメイクの用意をしてしまう。

 化粧台の中からいくつかの化粧道具を取り出し、宵の前に並べたのだ。

 晃がなぜこんなものを持っているのか謎だ。仮に母親のものだとしても、自分のもののように道具を扱えるのが不思議だった。


「まずは下地」

「メイクはしねーっつってんだろ!?」

「した方が、もっと色っぽくなるんだよ」

「祭行くのに色っぽさなんか求めんな!」

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