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Memory of Night

第7章 夏祭


 使用時間はたったの三分ほどだったが、とてもそうは思えない出来ばえだ。

 きっと女性相手ならば喜ばれる。

 ゆかたの着せ方といい髪型のセンスといい、晃は本当になんでもできる。


「どーも。宵の髪、均等に揃ってるわけじゃないから残っちゃったところもあるけど。まぁ、これはこれで――」


 そこで一端言葉を止め、晃は宵の後ろから右手で腕と体を拘束するように抱いた。そして、もう一方の手で、宵の頬を撫でた。


「……っ!」


 宵はカァッと顔を真っ赤にし、反射的に晃を振り向こうとする。

 しかし晃はそれを許さずに、宵の顎を掴んで正面で固定し、自分の顎を宵の肩に乗せた。

 そうして耳の側で、甘く囁いた。


「大和撫子みたいでお綺麗ですよ、宵お嬢様?」

「ば……っか! 変なこと言ってねーで離せよ!」


 宵が身をよじるようにして、晃の腕から抜け出そうとする。

 晃は楽しげに笑って、宵の首筋に口づけた。ちゅっと軽く吸い上げる。

 赤く残った痕を指でなぞりながら、晃が言った。


「今日一日、宵は俺のもの。これはその印だよ」


 目を細め、どこか愛しいものでも見るようにゆっくりとそう告げた。

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