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Memory of Night

第6章 再会


 晃に先導されるまま、バイクが一台通れるほどのスペースしか空いていない脇道に入った。

 壁にもたれるようにして晃が宵を見る。

 さとすような視線を向けられ、宵は戸惑いながらも晃の肩に手を置いた。

 晃の口元に顔を近付け、切れた唇に恐る恐る舌を這わせる。赤い血は、鉄の味がした。


「……不味い」


 思わずつぶやくと、晃の苦笑する声が耳のすぐそばで響いた。


「美味いとか思ったら吸血鬼になっちゃうよ」


 囁くような声に、体がびくんとする。

 舌を止めた宵に、晃は「もっと」とでも言うように、宵の背中に片腕をまわし、軽く引き寄せた。

 もう一度晃の唇を舐めたが、密着した体を気にせずにはいられなかった。

 消毒なんてどうやればいいのかわからなかったから、傷口を辿るように舌を動かす。

 晃の手が、宵の髪に触れた。

 また引っ張られるのかと思い、宵が一瞬体を固くする。

 だが晃は髪に指を絡め、すくようにしてもてあそんでいただけだった。


「綺麗な髪だね」

「しゃべんな……っ」


 耳もとで囁かれるのが嫌で、宵が慌てて言う。

 晃は宵の体を一度自分から離した。

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