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ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜

第1章 1


(もしかして、遠回しに避けられてる?)
 何か気に障る言動をしただろうか。そう思って自分の容姿に目を落とす。仕事が忙しくて、伸ばしっぱなしの黒髪は優に背中まで到達する勢い。お泊り用に持ってきた部屋着は灰色のパーカーセットともこもこ靴下。ほどよいげじげじ眉毛に頭には洗顔用の白いターバン。
交際三年という年月が、完膚なきまでに素の自分をさらけ出させてしまった。たしかに自分でも色気のない恰好だとは思う。
そんな私の一面も「自然体で良い」と言ってくれていたあれは、ただのリップサービスだったのか。
「それで、もう一つ突然なお願いがあるんだけど」
「な、なに」
私はブリキの玩具のようにからだを強張らせる。
もしかして、この転勤を機会に別れようなんて言われるんじゃ……、
「この転勤を機会に……」
あまりに想像通りにことが進みすぎて、私はもう青ざめるしかなかった。
瑛人さんは、学生時代のアルバイト先の先輩であり、私が初めてお付き合いした人だ。地元でも名のある大学を卒業した彼は有名企業に就職し、二年で出世頭となった。
ご両親がお医者さんだというのは、後に知った。
背が高くてハンサムで、私と付き合う前、瑛人さんの元にはいくつも縁談話が持ち込まれていたらしい。
家柄も、恋人としても、もったいないくらいに完璧な相手だと思う。
そりゃあ、地方企業でOLの私では吊り合わないと、常々思ってはいたけれど……。
「……しい」
「え、何?」
肝心の所を聞き逃して焦る私に、瑛人さんはまたはははと笑った。

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