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ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜

第2章 嘘つき

亜貴の指がその部分をこね回していく。時に指の腹で撫でまわされる。
瞬時にして、全身に電流が走ったように、快感が突き抜けた。頭の中が甘い旋律に犯されてしまう。亜貴の腕を引き剥がしたくても、逃げようと身を捩りたくても、思うように力が入らない。
情けないが、かすれた声で「やめて」と懇願することしかできなかった。
「姉ちゃん、感じてる? かわいい」
肌の上を這うような、なまめかしい声が右の耳を震わせた。
「こういうコトしてるとさ、昔を思い出すよね」
亜貴の濡れたような声が、今度は耳たぶを熱くする。幾多の夜を瑛人さんと過ごした私は、背後で漏らす亜貴の吐息に欲情が混じっていることを察していた。
「亜貴、もういい、やめて」
これがマッサージなわけがない。これは明らかに、愛撫だ。
「やめない。だってようやく姉ちゃんが俺のところに戻ってきたんだから」
「も、戻ってない……!」
「そんな抵抗したって無駄。姉ちゃんがいるから戻ってきたんだよ、俺」
亜貴のその一言に私は耳を疑った。
同時に先端を指先ではじかれる。
「は、う……っ」
情けない声を漏らした直後、腰の辺りに感じていた亜貴の男が硬くなった。
「また昔みたいな関係に戻ろうよ」
「な、に言ってるの。そんなの無理に決まってるじゃない」
「え、何で?」
逆にこっちが眉を潜めたくなるような質問だった。
「わ、私、結婚してるんだからね!」
「俺だって、あの時彼女いたよ」
「そ、それは」
「じゃあ何で俺と関係持ってくれたんだよ?」
核心を突くその問いに、私は何も答えられなかった。
周囲がうらやむようなかわいい彼女がいながら、地味で平凡な姉の私に欲情し、たびたび部屋に忍び込んでは夜這いを重ねていた弟。
亜貴は、私が熟睡しているものと思っていた。
その胸に秘めた不順な願望も、みだらな行為も、家族のだれもが知らないはずだった。
真っ白な壁に穴を空けたのは、まぎれもない私自身だ。向こう側の景色を見てしまったら後戻りはできないと分かっていて、踏み入れてしまった。亜貴のいる、『こっち側』の世界へ。

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