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じゃん・けん・ぽん!!

第13章 会長のヒ・ミ・ツ


 ※

 本当に痛かった。
 裕子の腕はすらりとしていて、指もまた細い。その細い指がぐりぐりと頭皮に喰い込む感覚は、尋常ではない痛さだった。細い見た目から想像できない力だ。
 晃仁は仕方がないので降参して、ノートから読み取ったことを話すことにした。
 それでようやく裕子は頭から手を離してくれた。
「それじゃ、ちゃんと正直に話してよね」
 空いていた椅子に、ちゃっかりと座る。
「でも本当に、そんなに深いことはわかりませんでしたよ。ただ、なんだかお父さんと仲が悪いのかなってくらいしか・・・・・・」
 ですよね――と晃仁は学に助けを求める。学は腕組みをした体勢で、不機嫌そうにうん、と頷き、晃仁の言葉に多少の補足をした。
「それから、どうしてか知らないが、いま晃仁が言ったことに加えて、父親との関わりに、スイカと塩が絡んでいるんじゃないかと予想したな」
 途端に裕子は、深いため息を着いた。胸の僅かな膨らみが萎んで見えるくらいに息を吐き出し、机に両肘をついて、その両手で頭を抱えた。せっかく真っ直ぐに伸びている狐色の髪を、両手でぐしゃぐしゃとかき回す。そして、
「ほとんど分かってんじゃん」
 と呻くような声で言った。
 そんなことはない、と晃仁は思った。むしろ、ほとんど何も分からないのだ。しかし、晃仁はそれをあえて言葉にしなかった。黙ったまま、裕子の次の言葉を待つ。
 やがて裕子は、顔をあげて言った。
「確かに、お父さんとは仲が悪いよ。それもスイカのせいで」
 まるで意味がわからない。父娘の確執にどうしたらスイカが関わってくるのか。
 裕子はどこを見ているのかわからない。長い睫毛に縁取られた瞳はやや伏せられていて、その瞳を伺うことができない。でも伏せているということは、机を見ているのだろう。両腕の前腕をべったりと机に置いて、瞳を伏せて茫洋としている表情は、まるで授業中に眠ってしまい、目を覚まして寝ぼけているかのような様子だった。
 裕子の褐色の肌を見つめていると、裕子は茫洋とした様子のまま、さらに言葉をつづけた。

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