
ながれぼし
第8章 in the water
てか大野くんの態度…
……素?
あまりにも何事もなかったような態度に、俺自身、もうこの話をしない方が良いのかなって思うほどで。
…
……
わっかんねぇ!!
いやね。ちょいちょい感じてたんだけどさ。
大野くんって、掴めない。
結局、なんでバイト終わるの待たされたのかもわかんないし。
…まぁ…俺が取り乱しそうになったから、今はこうなったんだろうけど…。
大野くんは、ベンチを覆うように枝を伸ばした木を見上げながら、蝉について話したり、空を飛べたらどうしたいだの話している。
…
……
ミステリー。
と言うか…男同士で手を繋いでベンチに座ってるって。
どうなの?
いや、偏見はないよ?
ニノと櫻井先輩っていうカップルだっているし、男子校ってあるし、同性愛ってやつ。
そ。付き合ってれば可笑しくはない構図。ってことが言いたいんだ俺は。
俺と大野くんは付き合ってるわけでもないのに、手を…しかもあれだ、恋人繋ぎ。ってやつで…
大「松本くん?」
「っわ!」
急に視界に入ってきた大野くんの顔。
ドックン!
っやめろ!この起爆剤がっ!!
……なんて事は口が避けても言えない。
ので、
「な、なに?」
精一杯気を反らそうとしたけれど…
大「顔。引きつってるよ?」
…わかってるよ!
俺は心の中で言い返す。
とほぼ同時に、きゅっ。と強く握り直された手。
んなっ!?
「っお!大野くんっ!」
大「なぁに?」
…
……ふっつー。
テメーは悪女か!小悪魔かっ!!
「ってさ!水泳!やらねーの?!」
大「え?」
……あ
つい咄嗟に、ずっと気になっていた事が口から出ちゃった。
.
そう。大野くんを
大会で何度も顔を会わせていたという櫻井先輩や岡田が、水泳部に誘っているとニノから聞いた。
でも答えは、NO。
大野くんは水泳部に入らない。
彼の真っ黒い髪や、その体を見れば水泳をしていない事は一目瞭然。
けれど、大野くんの過去の大会記録を調べれば、ニノや雅紀が言うように、今の彼からは想像もできない凄い人だった。
そして、怪我とかスランプとかそう言う記事もなくて…ただある年から忽然と水泳界から消えた。
知りたかった。
知りたかったんだ。
なんでそんな人が…大野くんが水泳を辞める、辞めなきゃいけなくなったのか。
