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雪に咲く花

第22章 本物の悪魔

もやもやした気持ちのまま、父親の転勤が決まり、逃げるように今の学校に転校してきたのだ。
拾った子猫も、近所の猫好きの家に引き取ってもらった。
新しい転校先では、静かに暮らしたい。
また、この容姿では、前の学校のようなことが起きるかも知れない。
自分の顔が悪いんだ。
この顔を隠してしまえばいい。
黒沢は、髪を無駄に伸ばしてわざとボサボサにし、分厚い瓶底眼鏡で顔を隠すようになったのだ。

黒沢の過去を聞いた亘は尋ねた。
「そんなことがあったのか?もてる男は辛いな。杉山光多君のことを周りに隠していたのもそのせいなのかい?」
「それもあるけど、光多は僕のことを何も知らないんです。僕は、すぐに分かりましたけど……」
転校した頃、自分と同じ顔を見つけて、双子の兄だと直感した。
やっと会えたのだと言う喜びは、あったものの、光多は学校での人気者として楽しく過ごしているらしい。
もし自分が、ここで名乗りをあげてしまえば、混乱を招くだけだ。
黒沢は、素の自分を隠し通すことを決意したのだ。

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