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僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

「今日は何でそんなに飲んだ?」

身体は逆を向いたまま、顔を彼女に向けて尋ねる。

「最近ツイてないの。でも、飲まれる程飲んでないわ」

「私、強いもの」と彼女は微笑む。

「俺を誘ったのは?」

「それは…。私が中学生だったら柊君とつきあいたいなぁと思って。あの頃に戻って、柊君に会いたい」

彼女は流暢に話しだした。
マジで酔ったフリだったか。

「このくらいの年の差ならいいんじゃね?本気で考えてくれるんなら俺は嬉しいよ?」

「私はもうダメだから」

寂しくそう言いながら、彼女は俺の背中に頭をもたげた。
俺はそのままの姿勢で質問を続ける。

「どういうこと?」

「私は殺人者なの。そのうち私も消される…伊織君のご両親が狙われているとわかっていたのに、自分の身が可愛くて……」

「伊織君と暮らすのが心苦しい」と言う。
彼女に良心があったことに安心する俺。

もう過ぎたことは、とやかく言えねぇ。
彩華さんは操られただけなんだし。

俺は彼女に向き直り、顔を覗く。

「どうして彩華さんが消されるんだよ?」

「…柊君、やっぱり知っていたの?…ま、本條さんの息子だもんね」

「違う。先日、彩華さんが寝込んだ時にスマホが光って、気になって覗いたんだ。ごめん」

俺は正直に話した。
あの父親とは俺は別物ってことをわかってほしかったのかもしれない。

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