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僕ら× 1st.

第12章 夏鍋パ --Hzm

「フラウっ、大丈夫?」

即座にリィは自分のシートベルトをはずして、後ろに身を乗りだす。

「もう少しで着くから。お前、ちゃんと席に座ってろ」

と言っているあいだに、靴を脱いだヤツは飛び移る。

リィは落ちた妹を抱えあげようとしている様子。
クルマ走行中なのに、こいつは。

と、妹の寝ぼけた声が聞こえた…。

「うぅん。リルのえっち」

「何でだよっ!」

「事実じゃないか」と小さく笑いながらヘアピンカーブを曲がると、直線道のゴールが見えてきた。

駐車場に到着し、ハンドブレーキをかけて俺も身体を回す。

「お前普段、ハニィに何してんだよ?」

リィに抱きかかえられた妹は、その胸で依然眠っている。
キスもしてないと言うわりには、抱き慣れてる感じじゃないか。

「ハニィを好きなんだもん、しかたないでしょ?」

開きなおってるよ…。

「リルフィ…好き」

リィの言葉を受けて、妹が返す。
夢のなかなんだよな?

「っ……フラウ。好きだよ!モン プッサン(僕のひよこちゃん)」

きゅっと抱きしめなおす。

……おい?

リィは俺が見ているのにも関わらず、妹の頬や耳をついばみ始め。
チュッ…チュッ……っと微かな音が鳴る。

「ハニィ。俺も好きだよ?モン ラパン(俺のウサギちゃん)」

おもしろくないので、俺も真似して言ってみた。

「ハンっ(帆澄):ドゥドゥー(私の優しい人)…だあい好きっ」

クスクス笑って妹が答える。
顔をあげたリィが、じとぉっと俺を見て不満げな表情をする。

「弟の彼女をとるなよ?」

ところで妹は、まだ寝てるの?
コンサートで疲れきったのか?
やはり、風邪?

「好きの格が違った…ね、フラウ。どういうこと?」

と、妹の寝顔を覗くリィ。

そんなこと言っても、俺は兄で、お前は男じゃないか。
"俺への大好き"は"お前への好き"にかなわない。
それでも嬉しくて心のなかでハンスウ(反芻)していると。

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