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僕ら× 1st.

第12章 夏鍋パ --Hzm

「伊織が羨ましいです。宮石だけじゃなく、こんな素敵なお兄さんが2人もいて」

伊織が羨ましいのは俺も同じだけどな。

「兄貴はともかく、俺は誇れたもんじゃないけどな」

気の向くまま遊んでる男だし…。

「竹崎への余裕の返しはさすがでしたよ」

「あのコな…まぁ、長い人生に1人くらいいてもいいんじゃないか?」

あきらめ笑いの依田だけど、「経験も大切かぁ」と自分を納得させている。

「俺ね、医者になりたいんです。なら、あんな患者さんがいても対処しなきゃいけませんものね」

医者?あぁ、賢そうだもんな。

「そうなのか。医者なら"あんな"とは思わないほうがいいかもな。自分の人生を豊かにする逸材…いや同じか」

依田はクスッと笑う。

「でも前向きでいいね。もしものときはよろしく、ドクター」

「こちらこそ、よろしくお願いします。カウンセラー」

運転する俺に顔を向けて頭をさげる。
もうすぐ、聞いていた住所に到着する。

「あのさ、依田君。俺、キミに伊織を頼みたいな。あいつは1人で抱えこもうとするとこあるから、味方になってやってね?」

「俺が伊織を頼ることはあっても、逆はありますかね?」

「今のままでいいんだよ。伊織はキミを信頼してる。社交的だけど慎重なあいつの懐に入れたんだ。キミは相当な男だよ…友だちでいてね。兄としてお願いします」

「それは、とてもありがたいです。俺は、伊織となら親友になれると思ってますから」

頼れる笑顔の依田を自宅に返し、クルマを舞いもどらせた。

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