テキストサイズ

僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

充分に温まって脱衣室に入ると、脱ぎ散らかした衣類は消え、3人分の着替えとタオルが用意されていた。
あの汚れ道着かあるいは、まっ裸で帰るかと思っていたから、ありがたいのに…怖ぇんだけど?

意識していなかったとはいえ、第三者の姿も気配も気づかなかった。
柊はわかっていたのかな。

「あと1時間もしたら服もそろうから、休んでけよ。冷蔵庫開けていいから。あ、泊まってもいいけど、俺は家に帰る」

そう言って兄ぃは座布団の上に座りこみ、スマホを操作しだした。

いや、"俺は帰る"って…ここ、どこだよ?
俺たちも連れて帰ってくんなきゃ…。

冷蔵庫を物色し、ミネラルウォーターを2本開けた。

「うん、そう。先に寝てて…暖かくしてな…おやすみ」

柊と窓際でボケッとしていると、兄ぃの話し声が聞こえた。

電話の相手は彼女?
"好きじゃない"とか言って、充分優しそうじゃねぇか。
俺に話をあわせたのか?
食えねぇ兄ぃだなっ。

と、俺も誰かにおやすみコールをしてみたくなった。
でも浮かぶのは……。
花野ちゃんの連絡先は知らねぇし、柊はここにいるし、残るは伊織くれぇ……。

「はい…兄貴どうしたの?」

あ…伊織の画面を出しただけのつもりが、つながった。

「間違えた」

と通話を切る。

「お前、深夜にイタ電かよ?」

柊の驚きのなか、今しがたの伊織からラインが届く。
開けると、"ちーん"と石化したスタンプだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ