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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

~吉坂侑生side~

髪が長くなってたなぁ。
背も少しは伸びたか。
あれから約半年だもんな……。

階段をおりた先、広場の柱に寄りかかっている柊を見つけた。
こいつ、途中までついて来たんだな……。

「花野ちゃんの準彼氏、、イオだったよ」

スマホをにらんでいた柊の横に腰をおろして、報告した。
こいつは気づいたとしても、俺に言いだしにくいだろうからな。

「ん?伊織が前に言ってたフィアンセの話?」

「うん、そう。すっげ仲良い」

高校生になった俺は、工学等の専門書を読みふけり、無意識下で彼女に向かいそうなベクトルを、強制的に切りかえていた。

夏休みに帰国した伊織が、ひとりどこかへ出掛けても気にしないように努めた。

だけど、2学期始まりの放課後、俺は高等部校舎を抜けて中等部をうろつく。
彼女への気持ちに、はっきり区切りをつけたくて……やっぱり会いたくて……。

屋上のはしでふたりを見つける。
会話の内容は聞こえなかったが、彼女のストレートの長い黒髪を、伊織が微笑みながら執拗に触っていた。

「ははっ、兄弟で女の好み、一緒か」

「笑いごとじゃねぇよ」

スマホを伏せて、柊が俺の肩にポンと手を乗せる。

「で、あきらめきれないから奪いにいくの?」

「いや、俺の入りこむ余地ねぇよ」

彼女の耳元に、口を寄せて話しかける伊織の姿を思いだす。
おおかた、留学先での出来事を教えているんだろう。

それにしてもふたり、校内でいちゃつきすぎじゃね?
伊織は話しかけながら彼女の髪にキスし、対する彼女は、嫌がるでもなく伊織を受けいれていた。

「わかんねぇぞ?」

お前は、あの光景を見ていないからそんなことが言えるんだ。
もしかして、身体の関係もすでにあるんじゃないかと疑うような仲睦まじさだったんだから。

「夢って、儚いな」

「ぷっ…それ、お前が言うセリフかよ」

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