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僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

「じゃ、今から花野ちゃんは俺の妹!いいな?俺、花野ちゃんみたいに可愛い妹、ほしかったんだ!」

柊が可愛い可愛いと言うもんだから、俺の口からも自然に出てきてしまった。

ま、彼女も喜んでる感じだし、これからはもっと言っちゃおうかな。
いや、"これから"なんて俺にはないんだ…。

「ありがとうございます。あれ?先パイ傘は?」

屋根が切れる手前で立ちどまり、重たい黒雲に包まれている俺の手元をうかがう。

「え?あっ。柊のヤツ!」

雨だってのに、俺の傘まで持って行きやがった。

「あっは。じゃあ、妹が入れてあげます」

彼女が開いたピンクの傘に手を伸ばす。
裏側は小さな花柄でもう、女のコ!って感じの傘。

「ふははっ。ありがとう。俺、持つよ」

小さくはないけれどひとり用。
俺は彼女が濡れないように気を配って歩く。
彼女の肩を抱ければいいのだけれど、そんな資格は俺にはない。

「これからも俺に遠慮せずに声かけてな?」

「はい。吉坂先パイも、ね?」

「おう」

こんな冷たい雨……めっちゃいい天気じゃねぇか。
彼女の斜め上から、長い睫毛が動くのを見つめた。

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