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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

「俺は、花野ちゃんに覚えられてねぇ。俺だって今まで、見ず知らずのヤツにそう言われて、嬉しいなんて思ったことねぇ」

俺は知らないコから言われても嬉しいけどな。

「見た目じゃなくて俺の中身を好き、なんて言ってくれたヤツはいねぇ」

そうお前が思っていることが、寂しいと思う。

「俺は、好きだけど?」

「お前が女ならな」

「惚れた?」

アルは箸を置くと、俺を無表情でじっと値踏む。
想像すんなよな…。

「ないな。んなガサツで態度もでかい柊女、おことわり」

で、フラレんのかよ?
"女なら"ってお前も言ったじゃねぇか!

お前、俺の本体に化粧してリボンとかつけただけだろ?

「このまま離れてつぎに高校で出会うとき、花野ちゃんには男がいるかもしれねぇぞ?」

味噌汁を流しこんで、俺も箸を置く。

「そうだな」

「そのときには、もう忘れてる?」

先に食べ終えたアルがスマホを見つめてるかと思ったら、隠しどり花野じゃねぇか。

「忘れる?どうやって?」

「ほかの女とつきあって」

「それしかないだろ?」と言うと、じっと俺の目を食いいるように覗いてくる。

「…花野ちゃんに男ができそうなのか?」

「だって、あれだけ可愛いんだぜ?常識で考えろよ」

不機嫌に首を振るアルは、寝ると言って自分の部屋にこもった。

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