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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第12章 予期せぬ……


「あ、これは私がトロくて、彼の神経逆なでして
 しまったみたいで……」


  バレバレの嘘。


「理由は何にせよ、非力な女相手に暴力を振るうのは
 見過ごせない」

「……」

「野郎との話しはまだある?」


  絢音はゆっくりと頭を横に振った。

  怒りに爆発しそうな自分を必死に抑える。


「……せんせ?」


  抱き締めたまま絢音を乗り越え、両膝を折らせ、
  バンッ! 助手席のドアを閉めた。

  彼氏・池谷が階段を降りて来る姿が見えた。

  助手席の窓を下ろすと、途端、冷たい風とみぞれに
  変わりつつある雪が横殴りに容赦なく吹き込んで
  来る。

  ぎゅっ  ―― ぎゅっ ……

  階段の雪を踏みしめる音を背中で聞いた絢音が 
  ―― 微かに怯えた表情でオレのジャケットを掴む


「あのぉ、どうかしました?」


  このオレが初対面の男・池谷に対しての怒りを
  必死に押し殺している等とは、
  夢にも思っていない風で車内を覗き込んできた
  そいつがオレと絢音の体勢を見て大きく息を呑み
  固まった。

  振り返ろうとした絢音の頭をがっちり押さえ、
  胸元へ押し付ける。


「あなた方お2人の問題に首を突っ込む気は
 ありませんが、さすがの私もこんなに怯えた
 彼女は放っておけない」

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