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Treasure of life

第11章 After the rain


どうすることもできないまま

智くんに別れを告げる―――。

とうとう今日という日が来てしまった。


あんなに楽しみにしていた花火大会だったのに……。

この日が来るのが憂鬱でしかなかった。

空は朝からどんよりとした雲に覆われていて、まるで俺の心の中を表しているようだった。


「潤、なんか元気ないよ?どうした?」
「…なんでもない。ごめん」

俺は必死に笑顔を作った。



これが…。

これが…、智くんと最後のデートになっちゃう……。


もしかしたら会うのも最後。

そう思うと

やりきれなさでいっぱいになる。



夜空に大輪の花がいくつも咲き乱れる。


こんな悲しい気持ちで見たくないのに


愛しい人がこんなに近くにいるのに。


花火があがる度に、確実に終わりが近づいていることを痛感した。

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