
ねぇもう嫌・・・
第22章 時に神を憎むほどの出来事が襲っても…
暫くするとスーッと管が引き抜かれた。
そのまま休むことなく柊先生は動き続ける。
ベッドから降り、後片付けをするとベッドサイドの椅子に腰掛けた。
「…っ」
そっと両膝を合わせ、両手で口元を隠しながら、柊先生を見つめた。
『…』
「…?」
目を少し細め、その黒いシャツのボタンを凝視する。
いつもと違う柊先生に、何かを期待してる自分がいる。
怖い…。
でももし一線を超えてしまっても、柊先生の事だからきっと上手くくるめてくれると思う。
医師としての技力、地位、名誉を第一に考えてきた人だ。
こんな事の為に今までの努力を無駄にするようなことはしない筈…。
言いようもない不安を、どうにかして握り潰そうとしてるのは分かってる…。
『触診、しよっか。
はい起きて。』
「っ…」
やっぱ怖いや…っ。
海の大きな波が堤防を超えて地を這うように、私の涙腺も崩壊していった。
…涙が止まんない…っ。
柊先生の手が私に向かって伸びてきて、
そのまま私の腕を掴んで無理やり起こされた。
『っ。分かってると思うけど…
最後までシないよ?
言ったじゃん。
俺は、あくまでも医者として、
…患者の為に尽くすだけだって。
ほらお腹見して。
少し押すよ。』
「っ…」
生暖かい手が下腹をさする。
片手で背中を支え、片手でぐっと強くお腹を押した。
「…っ」
思わず背中を丸めた。
『痛くない?』
「…」
何だか裏切られた気分…。
僅かなモノを信じ賭けて裏切られて。
これじゃあ中学の時と同じだよ…
高校生になってこの病院に来た時は、あの時とは違うって心に決めたのに
『じゃ、次胸。』
「っやだ…」
もう柊先生の言いなりにはなりたくない。
慌てて上着の襟元を掴んだ。
『っ。そんな弱い力で俺に抵抗するつもり?』
「っ…」
やっぱり柊先生の影にチラつくのは、医師の姿じゃない…っ
結局必死に押さえても、無理やり離されて露になった身体を、慌てて手で隠した。
